6.3.12

時代に逆らう恐竜たち


この恐竜のモニュメントは、写真から見る限りではタイヤのようなものから作られているようです。
それもそのはず、ここは横浜タイヤの工場内だそうです。

時代の流れから脱落、つまり絶滅した恐竜ですが、今こうしてタイヤ工場のもとに蘇ったわけです。
時代の要請に最大限に応えた姿としてですが。


クルマの世界も、時代の流れは凄まじいものです。
それについてこれないもの、いわゆる恐竜のようなものは
社会不適合のレッテルを貼られ、消えていくのです。

一部の環境保護団体は大いに喜び、さらに推し進めることでしょう。
ですが言わせてもらえば、そのことが本当に正しいとは思えません。


今回の投稿は、現代に生き続ける恐竜たちについてです。
エコ一色の現代で忘れかけた、「浪費」という贅沢を体現したクルマたちに焦点を当てます。




ケーニグセグ・アゲーラR(レスポンスより)

一つめは、ジュネーブモーターショー12で公開予定のこのクルマから。
トップギアではボードに収まらんばかりに長い名前で有名な、あのメーカーです。

ケーニグセグ・アゲーラシリーズの一つになる、「アゲーラR」です。
'10年に誕生したアゲーラシリーズのなかでは、'13年モデルということになります。


自分の中でのケーニグセグは、あの特徴的なガルウィングドアに役立たずのリアスポイラー、
そんでもって心臓部には狂気的な代物が積まれたモンスターという印象が強いです。

事実、トップギアに登場した際も、あれだけのスペックでありながら困難な空力特性のおかげで
1回目ではマシンを破損させてしまうハプニングに陥ったという記憶があります。

2回目では見事に、タイムボードの上位に割って入るほどのポテンシャルを発揮しましたが、
フェラーリやマクラーレンに比べたらやはり粗削り感は否めないクルマでした。


そのクルマに「R」という名を冠したモデルが、今年ついにお披露目となりました。
いきなり度肝を抜いたのが、その驚異的なスペックでしょう。

エンジン: 4.7L V8ツインターボ
最高出力: 1115ps→1140ps
最高トルク: 122.4kgm→-kgm
車両重量: 1330kg→1310kg
0-100km/h: 2.9s→-s
許容回転数: 7250rpm7500rpm
最大ダウンフォース: +20kg(250km/h時)

 先代のアゲーラRは「6つの世界記録を持つクルマ」として有名でしたが、
このニューアゲーラRも、パフォーマンスにさらに磨きをかけてきたと想像できます。

同じジュネーブモーターショーでは、ブガッティ・ヴェイロンも新モデルを発表するなど、
「1000psオーバー級」の戦いが更に熱気を帯びているようです。





この退屈なことで有名なブログを読んでくださる方のなかにも、トップギアファンはいらっしゃることでしょう。
ちなみに自分はいつでも、必ず自分以外に読者がいることを前提に話を進めています。

シーズン18も既にエピソード6まで進行したのでしょうか、ときは早いものです。
もう一つのクルマは、このシーズンに出てきたある「遺産」について。


BMW製の46L、V12エンジン―、決して「4.6L」ではありません、46Lで間違っていません。
グランツーリスモで想像するなら、「タンクカー」が理想でしょうか。

あのクルマも桁外れの排気量のエンジンを持つクルマでしたね。
そう、タンクカーとブルータスの共通点はその「エンジン」にあるわけです。


タンクカーもブルータスも、もとのエンジンは戦車などに使われる代物なのです。
またブルータスのシャシーは、1908年製造という記述もあるほどのもののようです。


トップギア・テストトラックが、元軍用飛行場を利用したロータスのテストコースであるということはご存知だと思います。
まさに、WWIIの遺産とも言うべき場所で、現代の「戦闘機」が開発されているわけです。

今シーズンではそのコースを、約一世紀前に生を享けたシャシーとエンジンが駆け巡ったわけです。
歴史番組をもつジェレミーにとっても、一世紀を挟んだ「共演」の場への立ち会いには胸がときめいたことでしょう。


バルブむき出しのエンジンが奏でる爆音は、まさにWWII中に空を駆け巡るスピットファイア―。
翻訳付きではない動画ではありましたが、自分はそんなふうな響きを感じました。

現代のF1が繰り出す甲高いエキゾーストサウンドとは正反対に位置するものですが、
どちらも心を震わす素晴らしいノイズであるという点では一緒です。



時代は今クルマに対し、「エンジンを使うな」と言わんばかりの圧力をかけてきます。
電気自動車の開発、ハイブリッドの普及などその勢いは加速するばかりです。

その流れに乗れない、つまり高出力で大排気量のエンジンを持つクルマたちは
次々と小さなエンジンに載せ替えられていく、ダウンサイジング化が進んでいます。


ジェレミーのコラムにこんな一文がありました。
他の生物のために、自らの進化を遅らせる生物は人間ぐらいだ―。

エンジンに代わる新しい機関、石油に代わる新しい燃料を探すという点では
決して「自ら進化を遅らせる」状況にあるとは言いがたいと考えることはできます。

ですが、ジェレミーが何を言いたいのかはなんとなくわかるような気がします。
人類にとって最も偉大な発明の一つでもある内燃機関を捨てることほど、
愚かで不利益で非効率的なことはない、ということを言いたいのでしょう。

その考えには同意できます。
紛れも無く、内燃機関の利便性は他の機関を圧倒するものでしょう。


つまり、進化を遅らせると言うよりは、間違った進化をしようとしているのではないでしょうか。
自分たちのためではない、他の「何か」のための、本当は望まれているのかわからない進化を。



クルマも、今はひとつの分岐点に差し掛かっているのです。
象徴ともいうべき内燃機関との決別か、共存かという重大な分岐点に。

おそらく、時代の要請もあってその規模は劇的に小さくなることでしょう。
つまり、エンジンを積まないクルマが当たり前になる日も来るのかもしれません。


ですが、こんな悲しい事は他にないと思いませんか。
「エンジン」という単語が要らなくなり、聞こえる騒音はタイヤと窓からのみ、
初めてエンジンキーを回すあの緊張感、アクセル開度に連動したエンジンの唸り声すらも消え、…。

クルマに興味がない人も、きっとこんな日が来たら後悔することは目に見えています。
合理化を追い求めた先に待っている楽しみなど、ひとつもないのですから。



この恐竜たちも、合理化の中ではまっさきに抹殺すべき対象でしょう。
あなたが余程の偽善者かエコニズムに洗脳された狂人であるのなら。

ですが、そんなことが本当に人々に望まれているのでしょうか。
この広い世の中、すべてが多数決で動くわけではないのです。


たまにはこういう「浪費者」だっていいのではないでしょうか。
「浪費者」は、偽善者が叩くのもよし、その浪費の豪快さを見ているのもよしと、非常に良いキャラクターだと思うのです。


それぞれに時代には、必ず異端児というのがいます。
野球で言うなら、キャッチャーにバットを投げつけたり、敬遠球に手を出したり、など。

まっとうに言えば、それらの行為は頭がいいとは言えないでしょう。
ですがこのような人たちに人々は考えさせられ、惹かれていくのです。


クルマの世界だって、そういった意味では同じなわけです。
ロボットばかりではなく、たまには恐竜を混ぜたほうが面白いとは思いませんか。

少なくとも今年は、まだそういう考えが優勢のようです。
どうかこの合理化の時代に、「勇気ある浪費」をしてみては。

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